ヘルニアとは何か
ヘルニアとは、体内の臓器や組織の一部が、本来あるべき部位から飛び出してしまう状態のことを指します。
飛び出した部位によって様々な種類があり、それぞれ症状も異なります。
「ヘルニア」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは腰の痛みですが、実は様々な部位で発生する可能性があるのです。
ヘルニアの種類と症状
ヘルニアは発生する部位によって様々な種類に分類されます。
ここでは代表的なヘルニアについて解説します。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間にあるクッションの役割を果たす椎間板の一部が飛び出し、神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こす疾患です。
腰や首に発生することが多く、特に腰椎椎間板ヘルニアは「腰痛」の代表的な原因として知られています。
主な症状としては、腰や首の痛み、脚やお尻のしびれ、麻痺などがあります。
咳やくしゃみをすると痛みが強くなることもあります。
鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアは、太ももの付け根にある鼠径部(そけいぶ)から腸の一部が飛び出すヘルニアです。
男性に多くみられ、特に乳幼児や高齢者に多い傾向があります。
鼠径部に膨らみができることが特徴で、腸が締め付けられると激しい痛みを伴う場合もあります。
また、嵌頓(かんとん)と呼ばれる状態になると、緊急手術が必要になることもあります。
その他の種類のヘルニア
椎間板ヘルニアや鼠径ヘルニア以外にも、様々な種類のヘルニアが存在します。
例えば、横隔膜ヘルニアは横隔膜に穴が開き、胃や腸などの腹部臓器が胸腔内に飛び出すヘルニアです。
先天性のものと後天性のものがあり、呼吸困難や胸痛などの症状が現れます。
また、大腿ヘルニアは大腿部の血管や神経が通る管に腸の一部が飛び出すヘルニアで、鼠径ヘルニアと同様に嵌頓を起こす可能性があります。
臍ヘルニアはおへその部分から腸が飛び出すヘルニアで、新生児や乳幼児に多くみられます。
腹壁瘢痕ヘルニアは手術の傷跡から腸が飛び出すヘルニアです。
ヘルニアの種類 | 好発部位 | 主な症状 |
椎間板ヘルニア | 腰、首 | 腰や首の痛み、脚やお尻のしびれ、麻痺 |
鼠径ヘルニア | 鼠径部 | 鼠径部の膨らみ、痛み |
横隔膜ヘルニア | 横隔膜 | 呼吸困難、胸痛 |
大腿ヘルニア | 大腿部 | 大腿部の膨らみ、痛み |
臍ヘルニア | おへそ | おへその膨らみ |
腹壁瘢痕ヘルニア | 手術の傷跡 | 傷跡の膨らみ |
このように、ヘルニアは多種多様であり、症状も様々です。
体に異常を感じたら、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。
なぜヘルニアになるのか 解説
ヘルニアは、体内の組織の一部が本来あるべき場所から飛び出してしまう状態です。
この章では、様々な種類のヘルニアが発生する原因について詳しく解説します。
加齢による組織の衰え
加齢に伴い、体の組織は徐々に衰えていきます。
椎間板や筋肉、靭帯なども例外ではなく、弾力性や強度が低下することで、ヘルニアのリスクが高まります。
特に椎間板は水分が失われて薄くなり、クッションとしての機能が低下しやすいため、椎間板ヘルニアの主な原因となります。
姿勢の悪さや無理な動作
猫背や前かがみの姿勢、長時間同じ姿勢を続けること、重いものを持ち上げる際の中腰姿勢などは、体に大きな負担をかけ、ヘルニアを引き起こす原因となります。
また、急な動作や無理な体勢での運動も、組織を損傷しヘルニアにつながる可能性があります。
特に、デスクワークやスマートフォンの長時間使用による姿勢の悪化は、現代社会においてヘルニアの大きな要因となっていると言えるでしょう。
遺伝的要因
ヘルニアの発症には遺伝的な要因も関わっていると考えられています。
家族にヘルニアの既往歴がある場合は、自身もヘルニアになりやすい体質である可能性があります。
遺伝的な要素は、椎間板の形状や強度、筋肉や靭帯の質などに影響を与えると考えられており、生活習慣と合わせてヘルニアのリスクを高める要因となります。
重いものを持ち上げるなどの負担
重い物を持ち上げる、特に中腰姿勢での持ち上げ動作は、腰に大きな負担をかけ、椎間板ヘルニアの大きなリスクとなります。
重量物の持ち上げ作業に従事する人は、特に注意が必要です。
適切な持ち上げ方や、重量物の運搬に適した道具の使用を心がけることが重要です。
また、日常的に重い荷物を持つ場合も、体に負担をかけないよう、リュックサックなどを活用し、重量を分散させる工夫をしましょう。
妊娠・出産
妊娠中は、お腹が大きくなるにつれて腰への負担が増加し、椎間板ヘルニアのリスクが高まります。
また、出産時には強い腹圧がかかるため、鼠径ヘルニアのリスクも高まります。
妊娠中は、適度な運動やストレッチ、正しい姿勢を心がけることで、腰への負担を軽減することが重要です。
肥満
過剰な体重は、腰や腹部への負担を増大させ、ヘルニアのリスクを高めます。
特に、内臓脂肪の蓄積は腹圧を高め、鼠径ヘルニアのリスクを高める要因となります。
適正体重を維持することは、ヘルニアの予防だけでなく、健康維持のためにも重要です。
ヘルニアの種類 | 主な原因 |
椎間板ヘルニア | 加齢、姿勢の悪さ、重いものを持ち上げる、遺伝的要因 |
鼠径ヘルニア | 加齢、肥満、妊娠・出産、慢性的な咳、重いものを持ち上げる |
大腿ヘルニア | 加齢、肥満、妊娠・出産、先天的な要因 |
臍ヘルニア | 肥満、妊娠・出産、腹水、先天的な要因 |
腹壁瘢痕ヘルニア | 手術後の傷跡の脆弱性、肥満、感染症 |
これらの要因が単独、あるいは複合的に作用することでヘルニアが発生します。
自身の生活習慣を見直し、ヘルニアのリスクを軽減するよう心がけましょう。
ヘルニアの症状
ヘルニアの症状は、ヘルニアの種類や発生部位、重症度によって大きく異なります。
初期段階では自覚症状がない場合もありますが、症状が進行すると日常生活に支障をきたすほどの痛みやしびれ、麻痺などを引き起こす可能性があります。
そのため、早期発見・早期治療が重要です。
痛みやしびれ
ヘルニアの代表的な症状として、痛みやしびれが挙げられます。
椎間板ヘルニアの場合、腰や首に激しい痛みを感じ、その痛みが脚やお尻、腕などに広がる坐骨神経痛や頸肩腕症候群を引き起こすことがあります。
また、鼠径ヘルニアでは、脱腸した部分に鈍痛や違和感が生じます。
これらの痛みやしびれは、ヘルニアによって神経が圧迫されることで発生します。
運動麻痺
ヘルニアが重症化すると、運動麻痺が起こる可能性があります。
椎間板ヘルニアの場合、神経の圧迫が強くなると、足腰の力が入りにくくなったり、歩行が困難になることがあります。
また、排尿・排便のコントロールが難しくなる場合もあります。
このような症状が現れた場合は、すぐに専門家への相談が必要です。
排尿・排便障害
重度の椎間板ヘルニアでは、膀胱や直腸を支配する神経が圧迫されることで、排尿・排便障害が起こる場合があります。
具体的には、尿が出にくい、尿漏れ、便秘、便失禁などの症状が現れることがあります。
これらの症状は日常生活に大きな影響を与えるため、早期の対応が重要です。
ヘルニアの種類 | 主な症状 | その他の症状 |
椎間板ヘルニア(頸椎) | 首の痛み、肩こり、腕の痛みやしびれ | 頭痛、めまい、吐き気、自律神経症状 |
椎間板ヘルニア(腰椎) | 腰痛、坐骨神経痛(お尻から足にかけての痛みやしびれ) | 間欠性跛行(歩行時の痛み)、下肢の筋力低下 |
鼠径ヘルニア | 鼠径部(太ももの付け根)の膨らみ、痛み、違和感 | 嵌頓(ヘルニアの内容物が戻らなくなる状態) |
大腿ヘルニア | 鼠径部の下方の膨らみ、痛み | 嵌頓のリスクが高い |
臍ヘルニア | へその周りの膨らみ | 乳幼児に多い |
腹壁瘢痕ヘルニア | 手術の傷跡部分の膨らみ | 手術後の合併症として発生 |
上記以外にも、ヘルニアの種類によっては特定の症状が現れることがあります。
例えば、食道裂孔ヘルニアでは胸やけや逆流性食道炎の症状が現れることがあります。
また、横隔膜ヘルニアでは呼吸困難や消化器系の症状が現れることがあります。
自身の症状に不安がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査と診断を受けることが大切です。
ヘルニアの診断方法
ヘルニアの診断は、症状や身体所見、そして様々な検査結果を総合的に判断して行われます。
確定診断のためには、医療機関を受診することが不可欠です。
問診
問診では、現在の症状、症状が出始めた時期、痛みの程度や性質、過去の病歴、生活習慣などについて詳しく聞かれます。
いつから、どのような状況で、どの部位に、どんな痛みやしびれがあるのかを具体的に伝えることが重要です。
日常生活での動作や姿勢、仕事内容なども診断の重要な手がかりとなります。
画像検査
画像検査は、ヘルニアの種類、大きさ、位置、神経への圧迫の程度などを確認するために実施されます。
主な画像検査には以下のものがあります。
検査方法 | 特徴 |
レントゲン検査 | 骨の状態を確認できます。ヘルニア自体は写りませんが、骨の変形や狭窄など、ヘルニアの間接的な原因を特定するのに役立ちます。 |
MRI検査 | 椎間板、脊髄、神経などの軟部組織を鮮明に描出できるため、ヘルニアの診断に最も有効な検査です。ヘルニアの大きさや位置、神経への圧迫の程度などを正確に把握できます。 |
CT検査 | 骨の状態をレントゲンよりも詳細に確認できます。ヘルニアの診断にはMRI検査ほど有用ではありませんが、骨の変形や骨折などがある場合に役立ちます。 |
神経学的検査
神経学的検査では、神経の機能が正常に働いているかを調べます。
具体的には、腱反射、筋力、感覚などを検査します。
どの神経が、どの程度圧迫されているかを評価することで、より正確な診断と適切な治療方針の決定に繋がります。
例えば、特定の部位の感覚が鈍くなっていたり、筋力が低下している場合は、その部位を支配する神経がヘルニアによって圧迫されている可能性が考えられます。
これらの検査結果と問診で得られた情報を総合的に判断し、ヘルニアの診断が確定されます。
どの検査が必要かは、症状や身体所見によって異なります。
医師の指示に従って検査を受けるようにしましょう。
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