腰痛と側弯症の関係性
腰痛に悩まされている方は少なくありませんが、その原因の一つとして考えられるのが側弯症です。
側弯症とは、背骨が左右に湾曲してしまう病気です。
側弯症と腰痛は一見無関係に思えるかもしれませんが、実は密接な関係があります。
側弯症によって身体のバランスが崩れると、特定の筋肉や関節に負担がかかり、腰痛を引き起こす可能性があるのです。
側弯症が腰痛を引き起こすメカニズム
側弯症では、背骨の湾曲により身体の重心が左右に偏ります。
このバランスの崩れを補正しようと、周囲の筋肉が過剰に緊張したり、特定の関節に負担がかかったりします。
これが腰痛発生のメカニズムです。具体的には、背骨を支える脊柱起立筋や腰方形筋などの筋肉の疲労や炎症、椎間関節への負担増加などが腰痛につながります。
また、側弯症が進行すると、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの病気を併発し、腰痛をさらに悪化させる可能性も懸念されます。
腰痛が悪化しやすい側弯症の種類
側弯症には、大きく分けて先天性、特発性、症候性の3つの種類があります。
これらのうち、特に腰痛が悪化しやすいのは、特発性側弯症と症候性側弯症です。
特発性側弯症は思春期に発症することが多く、進行性の湾曲が見られる場合があります。
症候性側弯症は、他の病気や神経・筋の異常などが原因で起こる側弯症で、原因疾患によっては腰痛が悪化しやすい傾向があります。
以下に、側弯症の種類と腰痛との関連性をまとめました。
側弯症の種類 | 特徴 | 腰痛との関連 |
先天性側弯症 | 生まれつき背骨の形成異常がある | 湾曲の程度や部位によっては腰痛を引き起こす可能性がある |
特発性側弯症 | 原因不明の側弯症で、思春期に発症しやすい | 進行性の湾曲により腰痛が悪化する可能性がある |
症候性側弯症 | 他の病気や神経・筋の異常などが原因で起こる | 原因疾患によっては腰痛が悪化しやすい |
側弯症による腰痛の特徴
側弯症による腰痛は、一般的な腰痛とは異なる特徴を持つ場合があります。
例えば、左右どちらかの腰に痛みが出やすい、姿勢を変えると痛みが変化する、長時間の座位や立位で痛みが強くなるといった特徴が挙げられます。
また、側弯症の程度が進行すると、しびれや足の痛みなどの神経症状を伴う場合もあります。
これらの特徴に当てはまる場合は、側弯症が原因の腰痛である可能性も考慮し、専門家への相談をおすすめします。
側弯症の原因
側弯症の原因は、大きく分けて先天性、特発性、症候性の3つに分類されます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
先天性側弯症
先天性側弯症は、生まれつき背骨の形成に異常があることで発症します。
妊娠中の何らかの要因で、胎児の脊椎が正常に発達しないことが原因と考えられています。
具体的には、椎体の癒合や半椎体、肋骨の異常などが挙げられます。
先天性側弯症は、比較的早期に発見されることが多く、進行も早い傾向があります。
特発性側弯症
特発性側弯症は、側弯症の中で最も多くを占めるタイプです。
原因は不明とされていますが、遺伝的要因や成長ホルモン、神経筋系の異常などが関与している可能性が示唆されています。
特発性側弯症は、思春期に急速に進行することが多く、早期発見と適切な治療が重要です。
分類 | 発症時期 |
乳幼児期特発性側弯症 | 0歳~3歳 |
学童期特発性側弯症 | 4歳~10歳 |
思春期特発性側弯症 | 11歳~18歳 |
症候性側弯症
症候性側弯症は、他の病気が原因となって起こる側弯症です。
神経・筋疾患、結合組織疾患、外傷などが原因となることがあります。
以下に代表的なものを挙げます。
- 神経・筋原性側弯症
神経や筋肉の異常によって引き起こされる側弯症です。
脳性麻痺、脊髄性筋萎縮症、筋ジストロフィーなどが代表的な疾患です。
これらの疾患では、筋肉のバランスが崩れることで脊柱が側方に弯曲します。
- 間葉系異常による側弯症
結合組織の異常によって引き起こされる側弯症です。
マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群などが代表的な疾患です。
これらの疾患では、結合組織の脆弱性により脊柱の支持性が低下し、側弯症を発症しやすくなります。
- 外傷性側弯症
外傷が原因で起こる側弯症です。
脊椎骨折や脊髄損傷などが原因となることがあります。
外傷によって脊柱の構造が変化し、側弯症が生じます。
- その他
上記以外にも、腫瘍や炎症などが原因で側弯症が生じることがあります。
また、代謝性疾患や骨系統疾患が原因となる場合もあります。
原因を特定するために、詳細な検査が必要となるケースもあります。
側弯症の症状と診断
側弯症は、背骨が左右に湾曲する疾患です。
見た目にはわかりにくい軽度のものから、日常生活に支障をきたす重度のものまで、症状の程度はさまざまです。
早期発見・早期治療が重要となるため、ご自身やご家族に側弯症の疑いがある場合は、医療機関への受診をおすすめします。
側弯症の症状チェックリスト
側弯症の症状は多岐にわたり、また、無症状の場合もあります。
以下のチェックリストで、側弯症の可能性をチェックしてみましょう。
症状 | 詳細 |
肩の高さの違い | 左右の肩の高さが明らかに違う。洋服の肩のラインがずれる。 |
肩甲骨の突出 | 左右どちらかの肩甲骨が、反対側よりも突出している。 |
ウエストラインの非対称性 | 左右のウエストのくびれ方が違う。片側のウエストラインが不明瞭。 |
肋骨の突出 | 前かがみになった際に、左右どちらかの肋骨が突出している。 |
骨盤の傾き | 骨盤が左右どちらかに傾いている。 |
体幹の傾き | 体が左右どちらかに傾いている。まっすぐ立つのが難しい。 |
背中の痛み | 背中に痛みや違和感がある。 |
腰痛 | 腰に痛みがある。慢性的な腰痛に悩まされている。 |
疲労感 | 疲れやすい。長時間同じ姿勢を保つのが難しい。 |
これらの症状は、他の疾患でも見られることがあります。
自己判断せず、医療機関を受診して適切な診断を受けることが大切です。
医療機関での診断方法
医療機関では、主に以下の方法で側弯症の診断を行います。
・レントゲン検査
レントゲン検査は、側弯症の診断に不可欠な検査です。
立位で正面と側面から撮影し、背骨の湾曲の程度(コブ角)や、骨の成熟度などを確認します。
コブ角が10度以上の場合、側弯症と診断されます。
また、側弯症の種類を特定するためにも重要な検査です。
・身体検査
身体検査では、医師が視診や触診を行い、姿勢や身体のバランスなどを確認します。
前かがみになってもらい、肋骨や背中の高さの左右差を確認するアダムス前方弯曲テストは、側弯症のスクリーニング検査として広く用いられています。
その他、神経学的検査を行い、神経系の異常の有無を確認することもあります。
側弯症の程度や症状によっては、MRI検査やCT検査などの追加検査を行うこともあります。
腰痛と側弯症に対する鍼灸治療の可能性
腰痛と側弯症に悩まされている方にとって、鍼灸治療は一つの選択肢となり得るのでしょうか。
その可能性について、詳しく見ていきましょう。
鍼灸治療の作用機序
鍼灸治療は、身体に鍼を刺したり、灸で温熱刺激を与えることで、様々な生理作用を引き起こすと考えられています。
具体的には、以下のような作用が期待されます。
・疼痛緩和作用:鍼灸刺激は、エンドルフィンなどの神経伝達物質の分泌を促進し、痛みを軽減する効果が期待されます。
・筋肉の緊張緩和作用:トリガーポイントと呼ばれる筋肉の硬結部位に鍼を刺入することで、筋肉の緊張を緩和し、血行を改善する効果が期待されます。
・自律神経調整作用:鍼灸刺激は、自律神経のバランスを整え、心身のリラックスをもたらす効果が期待されます。
側弯症と鍼灸治療に関するエビデンス
側弯症に対する鍼灸治療の効果については、まだ十分なエビデンス(科学的根拠)が確立されているとは言えません。
しかし、いくつかの研究では、側弯症に伴う腰痛や背部痛に対して、鍼灸治療が一定の効果を示す可能性が示唆されています。
例えば、ある研究では、鍼灸治療によって側弯症患者の疼痛レベルが低下し、生活の質が向上したという報告があります。
ただし、これらの研究は小規模なものが多く、更なる大規模な臨床研究が必要とされています。
側弯症のタイプや程度、個々の体質によって、鍼灸治療の効果は異なる可能性があります。
そのため、鍼灸治療を受ける際には、施術者とよく相談し、ご自身の状態に合わせた適切な治療プランを立てることが重要です。
鍼灸治療のメリット | 鍼灸治療のデメリット・注意点 |
● 薬物療法に頼らない治療法であるため、副作用のリスクが少ない。
● 身体への負担が少ない治療法である。 ● 痛みの緩和だけでなく、自律神経の調整や身体の機能改善も期待できる。 |
● 即効性のある治療法ではないため、継続的な治療が必要となる場合がある。
● 施術者によって技術や経験に差があるため、信頼できる施術者を選ぶことが重要。 ● まれに、内出血や痛みなどの副作用が起こる可能性がある。 ● 側弯症の根本的な治療法ではないことを理解しておく必要がある。 |
鍼灸治療は、側弯症によって引き起こされる腰痛や背部痛、筋肉の緊張などを緩和する効果が期待できます。
しかし、側弯症そのものを治す治療法ではありません。
側弯症の根本的な治療には、装具療法や手術療法などを検討する必要があります。
鍼灸治療は、これらの治療法と併用することで、より効果的に症状を改善できる可能性があります。
鍼灸治療以外の側弯症の治療法
側弯症の治療法は、その程度や原因、年齢などによって様々です。
鍼灸治療以外にもいくつかの治療法があり、それぞれに特徴があります。
ここでは、代表的な治療法である装具療法、運動療法、手術療法について詳しく解説します。
装具療法
装具療法は、進行性の側弯症に対して、カーブの進行を抑制することを目的として行われます。
思春期前の成長期にあるお子さんの場合、骨の成長がまだ残っているため、装具によって側弯の進行を食い止める効果が期待できます。
装具の種類と特徴
装具の種類 | 特徴 | 適応 |
チェンソーブレース | 胴体全体を覆うタイプの装具で、比較的大きなカーブの矯正に用いられます。 | 中等度以上の側弯症 |
ボストンブレース | プラスチック製の装具で、比較的柔軟性があり、装着感が良いとされています。 | 軽度から中等度の側弯症 |
TLSO | 胸椎から腰椎までを覆う装具で、様々なタイプの側弯症に対応できます。 | 中等度以上の側弯症 |
ミルーウォーキーブレース | 首から骨盤までを覆う装具で、重度の側弯症や、上部胸椎のカーブにも対応できます。 | 重度の側弯症、上部胸椎カーブ |
装具療法は、装着時間をきちんと守ることが非常に重要です。
医師の指示に従い、正しく装着することで効果を発揮します。
また、装具による皮膚トラブルにも注意が必要です。
運動療法
運動療法は、側弯症の治療において補助的な役割を果たします。
装具療法や手術療法と併用されることが多く、単独で側弯症を治癒させることは難しいとされています。
しかし、柔軟性の向上や筋力の強化、姿勢の改善など、様々なメリットがあります。
側弯症に効果的な運動
・ストレッチ:脊柱の柔軟性を高め、筋肉の緊張を和らげる効果があります。特に、側弯症によって短縮している側の筋肉を重点的にストレッチすることが重要です。
・体幹トレーニング:腹筋や背筋などの体幹を強化することで、姿勢を安定させ、脊柱への負担を軽減します。プランクや背筋運動などが効果的です。
・水泳:水中では浮力によって脊柱への負担が軽減されるため、無理なく全身運動を行うことができます。特に、クロールや背泳ぎは背筋を強化する効果があります。
・ヨガ:呼吸法とポーズを組み合わせることで、体幹の強化、柔軟性の向上、バランス感覚の改善などが期待できます。側弯症に特化したヨガのプログラムもあります。
運動療法は、自身の状態に合わせた適切な運動を選択することが重要です。
医師や理学療法士に相談し、指導を受けるようにしましょう。
手術療法
手術療法は、カーブの角度が大きく、進行が速い場合や、神経症状を伴う場合に検討されます。
手術の目的は、カーブの矯正、脊柱の安定化、神経症状の改善です。
・手術の方法
側弯症の手術は、脊椎固定術と呼ばれる方法が一般的です。
脊椎に金属製のロッドやスクリューを挿入し、カーブを矯正した状態で固定します。
手術は全身麻酔下で行われ、数時間かかります。
・手術のリスクと合併症
手術には、感染症、出血、神経損傷などのリスクや合併症があります。
手術を受けるかどうかは、医師とよく相談し、慎重に判断する必要があります。
これらの治療法以外にも、日常生活でのケアも重要です。
正しい姿勢の保持、適切なストレッチ、適度な運動などを心がけることで、側弯症と腰痛の悪化を防ぎ、より快適な生活を送ることができます。
日常生活での側弯症と腰痛のケア
側弯症と腰痛の悪化を防ぎ、快適な日常生活を送るためには、日々のセルフケアが重要です。
ここでは、自宅でできるケア方法を具体的にご紹介します。
正しい姿勢の保持
正しい姿勢を意識することは、側弯症と腰痛のケアの基本です。
頭から足先までが一直線になるように意識し、猫背や反り腰にならないように注意しましょう。
特にデスクワークやスマホ操作中は姿勢が悪くなりがちなので、こまめに休憩を取り、姿勢を正すように心がけてください。
座る際は、骨盤を立てて背筋を伸ばし、両足の裏を床につけるようにしましょう。
椅子に深く座り、背もたれを利用することも効果的です。
長時間同じ姿勢を続ける場合は、クッションやタオルなどを利用して腰をサポートすると、腰への負担を軽減できます。
立つ際は、左右の足に均等に体重をかけ、お腹に軽く力を入れるようにしましょう。
かかと重心にならないように注意し、つま先を少し外側に向けると、自然と骨盤が立ちやすくなります。
適切なストレッチ
ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進することで、腰痛の緩和や側弯症の進行抑制に役立ちます。
特に、背筋、腹筋、腰回り、股関節周りの筋肉を重点的にストレッチすることが大切です。
ここでは、おすすめのストレッチをいくつかご紹介します。
ストレッチ名 | 方法 | 効果 |
大腰筋ストレッチ | 片足を大きく前に出し、後ろ足の膝を床につける。前の足の太ももに両手を置き、上体をゆっくりと前に倒す。 | 股関節の柔軟性を高め、腰痛を緩和する。 |
ハムストリングストレッチ | 床に座り、片足を伸ばし、もう片方の足を曲げる。伸ばした足のつま先を両手で持ち、上体をゆっくりと前に倒す。 | 太ももの裏側の筋肉を伸ばし、腰への負担を軽減する。 |
体幹ストレッチ | 仰向けに寝て、両膝を立て、両腕を横に広げる。両膝を揃えたまま、左右にゆっくりと倒す。 | 体幹の筋肉を強化し、姿勢の安定性を高める。 |
ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲で、ゆっくりと呼吸をしながら行うことが重要です。
反動をつけたり、無理に伸ばしたりすると、怪我をする可能性があるので注意しましょう。
毎日継続して行うことで、より効果を実感できます。
適度な運動
適度な運動は、筋力強化、柔軟性向上、血行促進など、側弯症と腰痛のケアに多くのメリットをもたらします。
ウォーキング、水泳、ヨガ、ピラティスなど、自分の体力や好みに合わせて無理なく続けられる運動を選びましょう。
特に、水中ウォーキングは、浮力によって腰への負担が軽減されるため、腰痛持ちの方にもおすすめです。
運動を行う際は、正しいフォームで行うことが重要です。
間違ったフォームで運動を続けると、かえって腰痛を悪化させる可能性があります。トレーナーや専門家の指導を受けることも検討しましょう。
また、運動前後のストレッチも忘れずに行い、筋肉の柔軟性を保ちましょう。
これらのセルフケアは、側弯症と腰痛の症状を改善し、健康な身体を維持するために非常に重要です。
日々の生活に取り入れ、継続して実践することで、より効果を実感できるでしょう。
しかし、これらの情報は一般的なものであり、個々の症状に合わせた適切なケアを行うためには、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
自己判断でケアを行うのではなく、医療機関に相談し、適切な指導を受けるようにしましょう。
まとめ
この記事では、腰痛と側弯症の密接な関係性について解説しました。
側弯症によって脊椎に歪みが生じると、周囲の筋肉や神経に負担がかかり、腰痛を引き起こす可能性があることを理解いただけたでしょうか。
特に、特発性側弯症や神経・筋原性側弯症などは、腰痛を合併しやすい傾向があります。
側弯症による腰痛は、慢性的な鈍痛や、特定の姿勢での増悪といった特徴があります。
側弯症の原因は様々ですが、先天的なものから加齢、外傷など後天的なものまで多岐に渡ります。
そのため、正確な診断には医療機関でのレントゲン検査や身体検査が不可欠です。
そして、側弯症と診断された場合、鍼灸治療が腰痛緩和の一助となる可能性があります。
鍼灸治療は、筋肉の緊張を緩和し、血行を促進することで痛みを軽減する効果が期待できます。
ただし、鍼灸治療の効果には個人差があり、全ての症例に有効とは限りません。
装具療法や運動療法、手術療法といった他の治療法と併用することで、より効果的な治療となるでしょう。
日常生活では、正しい姿勢の保持や適切なストレッチ、適度な運動を心がけることで、腰痛や側弯症の悪化を予防できます。ご自身の身体の状態を把握し、適切なケアを行うことが大切です。
何かお困りごとがありましたら当院へお問い合わせください。

お電話ありがとうございます、
三郷駅前はりきゅう整骨院でございます。